プライベート日記 |
悲劇 |
あれは…そう、いつもの静かな昼下がりだった。 私が優雅に珈琲のドリップを待っていると、 背後から「カラン…ッ」という、どこか不吉な音が聞こえた。 ──いやな予感がする。 振り返ると、そこには堂々と棚の上に鎮座する猫。 足元には、微妙に傾いた塩の瓶。 猫、ドヤ顔。 私「やめて」 猫「(無視)」 私「それだけは……」 猫「(爪ちょん)」 瓶「ヒュンッ」 そして、地獄の幕開け。 ゴッ!!! 塩の瓶、華麗に私の足の小指へ直撃。 「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!」 崩れ落ちる私。声にならない絶叫。 小指という名の人体の弱点にダイレクトアタック。 涙目で猫を見上げる私── 猫「…………(冷めた目)」 おま、今、飼い主瀕死やぞ!? 猫は、まるで「その程度で騒ぐとか草」みたいな顔をしてた。ゴミを見るような目で私を見ていた ぺろっと前足を舐めて、スッ……と去っていった。 残されたのは、床に転がる私と、砕けた塩の瓶と、 プライドという名の粉塵。 ──そして、小指は静かに腫れていった。 (END) |