2025/8/27 13:05
魔法使いになれると思ったんだよ

BBQ開始直前── 友達「火つけといてー」 その一言で、私は完全にヒーローの顔になった。 頭の中でドラムロールが鳴り響く……。 ♡「まかせろやぁぁぁ♡♡」♡ 炭の山を見下ろし、私は魔法使いのごとく両手をかざした。 「メラ♡♡」 「ゴォォォォ……」と心の中だけでエフェクトが出る。 しかし現実は、冷め切った炭とシーンとした沈黙。 ──ただの黒い石ころ。 後ろから「ゴンッ♡」 痛烈な頭突き……いや、友達の手刀が脳天直撃。 友達「なにやっとんねん♡ バーナー使えや♡♡」 私はうずくまりながら「ぐぅぅぅ……頭が割れる……」と呻く。 その様子はもう、炭をつけるどころか仲間内で火種になっていた。 BBQの会場には、まだ肉の香りすら漂っていない。 漂っているのは……私の失笑と、頭から立ち上る熱気だけだった。 ──そう、BBQの最初の犠牲者は、肉でも野菜でもなく「私のプライド」だったのである。 |