2025/7/2 16:24
嘘のなかに本当を見つけるゲーム

初めて会ったときはこんなに深い関係になるなんて思いもしなかった。 お互い良い大人であることを差し置いても、あまりに嘘をつき慣れている人間の顔をしていたから。 生きているなら多少なりとも嘘は吐くものだけれど、これ程さりげなく会話に嘘を散りばめるその男のことを直観的に信用できないと思った。 それと同時に「面白い」と思ったこともまた事実だった。 こんな自らの好奇心を恨めしく思いつつ、この直感が抑えがたい衝動へ変化する予感を得ていた。 私は理解し難いことがらに対して強く惹かれてしまう性がある。 その男が言葉として吐き出す嘘と、たまに見せる自然な反応。 人間の生態として、本能的な反射はいかに強い自制心があろうともコントロールし難いことを私はよく知っている。 こんな人間に心を開いてはいけない、危険を知らせる警鐘が私の脳内に鳴り響くが、そんな時ほど前に出るのが私の生き方であり、もはや後退することはあり得ない。 如何にこの男を出し抜くか、そしてこんな嘘が私にも通用すると信じて疑わない性根をどのように屈服させるのか。 はじめはこんなパワーゲームの一端だった筈なのに、気が付くと相手の懐の深くまで入り込んでしまって驚く瞬間がある。 自己開示をさせることが私の目的だけれども、いざ心のあらましを見せられると、その中身の傷つきやすさに共感してしまうのかもしれない。 これは私が翻弄されているのか、それとも。 |