2025/3/30 23:45
空蝉の夢

私には夢があった。 ひとさまにはずっと「小さなバーをやりたい」と言ってきた。 でも、本当に私がやりたかったのはキャバレーだ。 わざとらしいほどに煌めくシャンデリアのもと、中央のステージでは半裸の女が薄絹を閃かせながら舞い、それをつまみに男どもは酒を飲む。 雑多な、 卑猥な、 場末な、 昭和な、 博奕な、 ヤクザな、 刹那的な、 泥塗れな、 小便臭い裏小路のような、 昼間のソープ街のような、 チクロやサッカリンのような、 安物の嘘で塗り固めた、 けたたましく毒々しい、 蛍光色とイミテーションが存在感を放つ、 虚構と打算しかないインチキなキャバレー、 女は最大限にその性を使い、男は最大限に見栄と金をひけらかす、決して生花ではなく造花が咲き誇る店。 安酒なんざ置かないよ、 それなのに中身はリザーブの、瓶だけナポレオンやヘネシー、 大仰な蝶ネクタイのバンドマンは同じ曲ばかり繰返し、女が踊った後には抜け落ちた羽根とラメの欠片、むせるような化粧と香水の残り香、 それでも、真実が砂漠の砂粒を選り分けるような確率で転がっている、欲望渦巻く店が欲しかったのだ。 …そんな下らぬ、されど見果てぬ夢を安酒を飲みながら友人に吐露したらキョトンとされた。 ブイブイいわせてた頃の夢の話 昭和も今や令和になっちゃった りょう □ おやすみなさイーブイ |